ニーチェ曰く、『善悪の彼岸』と並んでニーチェ思想への入り口となる著作。
読み手による丁寧な解釈を必要とする格言調ではなく、論文の体裁をとっているので理解するのにそれほど難解ではない。論文とはいえ、ニーチェの叫びに近いパトスが迸るのが訳文からも伝わる。
道徳が形成された過程を、貴族的自己肯定による「よい・わるい」という価値基準と、僧職的反感による「善い・悪い」という価値基準とに二分する。そして社会に跋扈する道徳とやらは、まさに後者が前者を駆逐したものに相違なく、弱者による自らの強敵への怨恨の一撃であることを暴露する。そしてその価値基準は、生成条件によって自らの基準を他人に強要するのだ。
貴族的自己肯定を果たして肯定してしまってよいのかという点には一抹の疑問を感じるが、道徳の正しさの捏造を暴きだす彼の作業は、本当に胸のすく思いがする。
このとおり、彼の思想は定義からして反社会的なものでしかありえないが、それを堂々と宣言するニーチェに、私は勇気付けられてしまうのであった。
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